第71章 家族

会社の外の駐車スペースで、有岡里穂は車に乗り込んでも、すぐにはエンジンをかけなかった。窓越しに、少し離れた場所に停まる一台の車へ視線を落とす。

ほどなくして、その車がゆっくりと動き出し、遠ざかっていく。

街角の向こうに完全に消えたのを見届けてから、里穂はようやく目を戻した。

まだ6時だというのに、空はとっくに夜の色に沈んでいた。漆黒の網が街をきつく包み込み、息苦しいほどの闇が広がっている。

里穂は車内で長いこと座り込んだまま、前世の記憶を次々と掘り起こしていた。

石野星紀のために捨てたもの。

有岡家の人間のために捨てたもの。

——全部、割に合わない。

しばらくして、里穂はよう...

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